JR北海道は遅れすぎ!遅延&運休多いけど札幌での利用状況は?

JR北海道は「遅れすぎ!」とよくネット検索に出てきます。

札幌においては、JR線よりも地下鉄の方が利用者が多いのですが、JR線沿線から通勤される方も多く、また旅行者の大半は新千歳空港から札幌までJR線を利用します。

そこで、JR北海道の遅延・運休の多さと、札幌市内における乗り方・利用状況などについてまとめてみました。

今回は、

・遅延に関する確かなデータが2016年の数値で得られたこと

・新型コロナウィルスの影響で2020年のデータは異常時データであること

・2019年までもインバウンドの好影響が出過ぎていたこと(今後どこまで戻るか不明)

などを考慮して、全てのデータは2016年度のデータを利用することで、通常の札幌でのJR利用状況を見ていくことにしました。

遅れすぎのJR北海道線は不人気

札幌市内におけるJR線の利用者数は、乗車人員ベースで地下鉄・バスに次ぐ3番目の公共交通機関です。

<1日平均乗車人員・2016年>
1.地下鉄:619,945人
2.バス :289,818人
3.JR :218,894人
4.市電 :24,871人

札幌では、JR北海道が遅延・運休が多いだけでなく、過去に何度となく事故も起こしていますので、遅延・運休のない地下鉄が大人気です。

JR北海道の路線・本数・始発・終電

札幌駅を中心に①新札幌・新千歳空港方面、②手稲・小樽方面、③江別・岩見沢方面・④あいの里公園・石狩当別方面の4方向に路線がありますが、それぞれの方面駅により列車本数・利便性が大きく異なります。

❹石狩当別  岩見沢❸
・・・↑  ↗
❷小樽←札幌→新千歳空港❶

◆列車本数(特急を除く)

❶新札幌・北広島・新千歳空港方面…1時間に3~8本(時間帯で異なる)

❷琴似・手稲・小樽方面…1時間に2~11本(時間帯で異なる)

❸江別・岩見沢方面…1時間に3~6本(時間帯で異なる)

❹あいの里公園・石狩当別方面・・1時間に2~4本(時間帯で異なる)

◆始発・終電(札幌駅発・特急を除く・2018年5月の平日)

❶千歳方面・・・・・6:02(始発)~23:59(終電)
※快速エアポートは5:50が始発

❷手稲方面・・・・・6:09(始発)~23:59(終電)

❸江別方面・・・・・6:00(始発)~23:59(終電)

❹あいの里方面・・・6:21(始発)~23:59(終電)

◆所要時間

小樽~札幌・・・32分~46分(快速エアポート・区間快速・普通)

手稲~札幌・・・10分~18分(快速エアポート・区間快速・普通)

石狩当別~札幌・・37分~44分(普通のみ)

新札幌~札幌・・・9分~17分(快速エアポート・普通)

新千歳空港~札幌・・37分~57分(快速エアポート・普通)

岩見沢~札幌・・・44分~50分(区間快速・普通)※特急利用で25分

JR北海道は遅れすぎ!と言われるけどどれくらい?

JR北海道がいかに遅れすぎ!なのか、東洋経済さんの2018年1月15日付記事「全国版!故障やミスが多い鉄道会社はどこだ」よりJR6社に関するデータ分を参照させて頂きました。

JR6社の輸送障害(運休または30分以上遅延)件数を比較

東洋経済さんの記事では、国土交通省が公表している「鉄軌道輸送の安全に関わる情報」に基づいて、2016年度の部内原因がもたらした輸送障害について、全国の鉄道事業者の状況をランキング形式で並べています。

「輸送障害」という専門用語は、旅客列車が運休または30分以上遅延した事態を指すのだそうです。

国交省の発表形式に従って、在来線と新幹線に区別して記載されたうちの「在来線」について、こちらでJR6社を抜き取り一覧にしました。

鉄道事業者名 件数合計 鉄道係員 車両 鉄道施設
JR東日本(在来線) 323 50 163 110
JR北海道(在来線) 170 31 77 62
JR西日本(在来線) 146 42 66 38
JR九州(在来線) 63 11 24 28
JR東海(在来線) 39 7 13 19
JR四国 16 2 7 7

JR北海道は、JR東日本に次いで2番目の多さです。

しかし、JR各社とは営業距離も列車本数も全く規模が違うので、次に、年間の列車走行距離の合計である「列車走行キロ」で割ったデータもお借りしました。

この「列車走行キロ」で割った数値が大きいほど、1列車が障害を引き起こす、または出くわす可能性が高いことを意味します。

列車走行距離当たりの輸送障害(運休または30分以上遅延)件数

東洋経済さんの算出で「列車走行距離100万km辺りの件数」の一覧があり、その中からJR6社を抜き出しました。

<在来線>列車走行距離あたりの運休または30分以上遅延件数の比較

JR北海道(在来線) 5.34
JR東日本(在来線) 1.49
JR九州(在来線) 1.04
JR西日本(在来線) 0.98
JR東海(在来線) 0.83
JR四国 0.77

何と、JR北海道の運休・遅延確率は、JR東日本の3.6倍でした。

JR四国とは6.9倍にもなります。

<新幹線>列車走行距離あたりの運休または30分以上遅延件数の比較

JR北海道(新幹線) 1.34
JR東日本(新幹線) 0.24
JR九州(新幹線) 0.11
JR東海(新幹線) 0.06
JR西日本(新幹線) 0.06

新幹線の部分で比較すると、JR北海道はJR東日本の5.6倍、JR西日本やJR東海の22倍にもなります。

在来線も新幹線も、いかにJR北海道の遅延・運休発生率が飛び抜けているかが分かりますね。

JR北海道の札幌市内「駅別」乗車人員

2016年度の1日平均の乗車人員と10年間比較(対2006年)を一覧にしてみました。

利用者数が多い駅=利便性の高いエリア、10年間比が大きく伸びている駅=21世紀以降に発展し注目されてきたエリア、そんな大よその目安になるであろうと、札幌市ホームページの乗車人員データと、こちらでの計算により10年間比を割り出してみました。

駅名 乗車人員 10年比
札幌 97,652 115%
手稲 15,589 110%
新札幌 14,267 107%
琴似 11,677 108%
桑園 10,295 120%
白石 8,077 127%
星置 6,276 98%
稲積公園 4,801 99%
発寒 4,548 139%
苗穂 4,227 134%
発寒中央 4,217 115%
森林公園 4,209 115%
新琴似 3,968 123%
あいの里教育大 3,769 109%
厚別 3,300 117%
新川 3,253 112%
篠路 3,104 141%
上野幌 2,839 129%
平和 2,710 113%
拓北 2,505 113%
八軒 2,314 124%
あいの里公園 1,717 139%
ほ し み 1,080 129%
太 平 861 135%
稲 穂 860 127%
百合が原 779 127%
合計 218,894 115%

全体的には、2006年から2016年の10年間で115%と大きく増加しています。

札幌で一番利用の多い地下鉄と比較すると、乗車人員合計でこそ地下鉄619,945人の1/3程度と少ないのですが、10年間比では地下鉄の108%より大きく伸びていました。

JR札幌駅にJRタワーができて、札幌商業の中心地が地下鉄大通駅近辺から、JR札幌駅近辺に移ったことが大きな要因でしょう。

もちろん、JR札幌駅から地下鉄にも南北線・東豊線2つの地下鉄「さっぽろ」駅と直結している利便性もあります。

しかし、リクルート住まいカンパニーが調査 した「SUUMO住んでいる街 実感調査2020 札幌市版」の[札幌] 住民に愛されている街(駅)ランキングでは、JR線の駅が1つも入っていません。

1位「静修学園前(札幌市電)」、2位「円山公園(地下鉄東西線)」、3位「西線9条旭山公園通(札幌市電)」、4位「西18丁目(地下鉄東西線)」、5位「西線14条(札幌市電)」、6位「バスセンター前(地下鉄東西線)」、7位「西28丁目(地下鉄東西線)」、8位「西15丁目(札幌市電)」、9位「東本願寺前(札幌市電)」、10位「西線6条(札幌市電)」

JR線の上位は、12位に「桑園」、16位に「札幌」でした。

人気一番の地下鉄とJR北海道を比較

◆乗車人員で比べてみた

札幌市内各駅の合計乗車人員(2016年・1日平均)では、地下鉄:619,945人に対しJR:218,894人と、約3倍の差がある通り、冬にはホームで待つのも寒い、運休や遅延も多くなるなど、地下鉄に比べJRは劣勢です。

しかし、2016年対2006年の10年間比較では、地下鉄の108%に対し、JRは115%と、増加率が大きく上回っていましたね。

そこで、もう少し乗車人員の比較をしてみると、JRもがんばっていることが分かりました。

地下鉄・JRの複線利用可能駅での乗車人員(2016年・1日平均)を比較してみると、

●地下鉄さっぽろ駅87,575人に対し、JR札幌駅は97,652人

●地下鉄新さっぽろ駅20,336人に対し、JR新札幌駅は14,267人

●地下鉄琴似駅13,470人に対し、JR琴似駅は11,677人

こうして比較してみると、けっこう拮抗しているようにも見えますね。

◆ICカードを比べてみた(SAPICA・Kitaca)

札幌近郊で使える交通系ICカードとして、SAPICA(サピカ)とKitaca(キタカ)があります。

元々は地下鉄・市電・バス系のSAPICAとJR系のKitacaでしたが、2021年3月現在では共通化された部分などもあるため、簡単に整理してみました。

・SAPICA
利用範囲:地下鉄・市電・バス(一部札幌市郊外も含む)+特定店舗
特典:地下鉄・市電・バスをSAPICAで支払うと、運賃の10%がポイント化、他

・Kitara
利用範囲:JR北海道のICが使える55駅+特定店舗
相互利用可能:SAPICAエリア・東京・東海地方・関西・九州などでも利用可能

交通利用重視ならJR・地下鉄・市電・バス・道外でも利用できるKitaraが良く、特典重視&札幌周辺のみ利用ならSAPICAが良いですね。

両方を持って使い分けるのも有りですが、1つ注意が必要です。

SAPICAと Kitacaの両カードを同じ定期入れなどに入れたまま、地下鉄・市電・バスのICカード読取機に通すと、エラーが発生する。この場合、駅の窓口で操作をしてもらう面倒が生じます。

遅れすぎ!JR北海道の原因は?

基本的には、遅れすぎ!遅延・運休の原因は、車両やシステムのメンテナンス不足など、お金をかけることができない経営状況にあります。

JR北海道は、政策的な補填が無ければ毎年赤字になってしまう会社で、その理由の大きな1つに、札幌一極集中化によって運賃単価が高い長距離列車の利用が少ないことが、よくあげられています。

しかし実は、区間別収支の公表を始めた2014年度以降、全ての年で札幌近郊を含めた全路線において赤字なのです。

また、運賃単価が高い長距離列車の利用が少ないこと以外の経営基盤が弱い理由として、人口希薄地帯が多い、豪雪・寒冷の厳しい北海道では列車や駅舎などの維持管理費が膨大であることなどが大きいとされています。

2016年11月にJR北海道が記者会見をした内容によると、当時営業していた2,500kmほどのうち、約半分の1,236kmは、JR北海道だけでは維持することが難しいとのことでした。

確かに、2016年度に廃止された留萌本線留萌~増毛間の各駅は、大半の駅が1日の平均乗車人員がたったの10人にも満たない厳しい状態でした。

しかし、先ほど一極集中の札幌近郊路線ですら赤字であると記しましたが、札幌一極集中化・人口希薄地帯・豪雪寒冷など北海道独特の営業環境だけが問題なのでしょうか?

2011年5月に特急スーパーおおぞらの脱線火災事故をはじめ、2015年4月の青函トンネル内特急スーパー白鳥・床下から煙が発生する事故など、事故が多発しています。

また、2011年度に実施した車両検査で検査項目未実施部分があることや、違法残業などが発覚、組織的な問題もありました。

更には、運転士の居眠り・運転士の覚醒剤使用など、従業員のモラルに関する問題もありました。

北海道の営業環境だけが問題なのではなく、経営状況の悪さ・組織的問題・事故発生・社員のモラル・・・全ては連鎖し、負のスパイラル状態に陥っていると想定されます。

首都圏や関西でも鉄道に関する良くないニュースは多いので、JR北海道だけが最悪という訳でもないのでしょうが、JR北海道の自助努力と周りとの協力体制の両面から頑張ってほしいものです。

札幌が、北海道が住みやすい街として存続するためには、JR北海道は重要な存在であるのですから。

JR北海道の明るい材料

赤字続きで乗車人員の少ないJR北海道ですが、札幌から一歩外へ出る時、旭川や函館など北海道内の地方都市への出張や、富良野・ニセコなどリゾートへの旅行、また東京や大阪への帰省・出張の際に、JR線は欠かせない公共交通機関です。

このまま沈んでもらっては困る存在ですが、暗い話ばかりでもありません。

JR札幌駅の賑わいや苗穂駅の移転による活性化、2030年には北海道新幹線が札幌まで延伸するなど、少しまとめてみました。

❶JR札幌駅

2000年代前半までは、札幌のビジネス・ショッピング・飲食等商業的要素の中心地は、札幌駅周辺ではなく地下鉄3路線全てが通っている大通駅の周辺でした。

(地方都市では、JR駅より10分~20分離れたエリアが、商業の中心地であることはよくあることですが)

しかし、この十数年で、JR札幌駅が交通の中心地としてだけでなく、ショッピングや飲食などにおいても、札幌の一番地となっています。

JRタワーにアピア・エスタ・パセオ・ステラプレイスの4つのショッピングモールと、大丸札幌店・JRタワーホテル日航札幌などが駅に直結していて、JR札幌駅の付加価値を大きく引き上げています。

ちなみに、
・若者たちを中心に、JR札幌駅は「サツエキ」と呼ばれています。

・JRの駅は「札幌」、地下鉄の駅は「さっぽろ」とJRは漢字、地下鉄はひらがな(ちなみに、新札幌もJRは「新札幌」で地下鉄は「新さっぽろ」、琴似はJRも地下鉄も同じ「琴似」)です。

❷北海道新幹線の札幌駅延伸、駅周辺の再開発も次々に決定

2030年度に北海道新幹線が札幌駅まで延伸する予定です。

これに合わせて、2030年冬季オリンピックの札幌誘致の話もあります(が、2021年3月現在、東京オリンピックすらどうなることやら・・・)。

しかし、札幌駅の東側エリア(南口・北口両方)の再開発や札幌駅南口近くの元西武デパート跡地の再開発が決定したり、札幌駅周辺は、2030年に向けてとんでもない発展が期待されています。

❸苗穂駅の移転に伴う周辺の活性化

上が札幌駅から東へ1駅の苗穂駅(南口)と改札でした。

下が駅に貼り出されていた2018年11月の駅舎移転に関するご案内です。

以前の位置より300mほど札幌駅側(西方向に)に移転するというだけでなく、

➀苗穂駅の南北が通れるよう自由通路ができたことで、札幌では1・2を争うショッピングモールである「アリオ札幌」へ買い物に行くのに、便利になりました(もうすぐ苗穂駅と直結します)。

②苗穂駅の南口・北口の両方に25階以上のタワーマンションが3棟も建設されています(1棟は完成済み)

タワーマンション以外にも、サービス付き高齢者住宅・商業施設などが2022年度予定で完成する予定です。

これで、JR線の駅がまた1つ大きく発展しそうです。

❹新札幌駅も巨大再開発が進行中

新札幌は、もともとJR新札幌駅と地下鉄新さっぽろ駅が直結・隣接して交通の利便性が非常に高く、駅直結で大規模ショッピングモールもあり、買い物の利便性も非常に高い良いエリアです。

その新札幌駅周辺には、更に2019年秋頃から再開発事業が2か所(G街区・I街区)で進められています。

I街区には、商業・宿泊・住居・医療中心の施設ができるのですが、この中にタワーマンションも建設中です。

街としては、2022年5月より順次開業予定ですが、病院や商業施設の他に、ラ・ジェント・スティホテルと高層マンション「プレミストタワー新さっぽろ」が建設中です。

また、駅の反対側のG街区には、2021年4月から新キャンパスとなる札幌学院大学と札幌看護医療専門学校の建物が完成しています。

新札幌駅の周辺は、札幌市の再開発事業が目白押しのため、かなりの発展が見込まれています。

❺日本ハムファイターズ新球場で新駅誕生!

札幌ドームを本拠地としていた日本ハムファイターズが、別の新球場(ボールパーク構想)を北広島市のきたひろしま総合運動公園の場所に、2023年開業に向け建設中です。

この場所はJR北広島駅から少し距離があるため、北広島駅より1.5km札幌駅寄りに新しい駅も建設することになりました。

ボールパークの開業が2023年の予定で、新駅の開業はそれ以降になる予定ですが、JR線にとっては活性化へ良い話です。

最後に/遅れすぎのJR北海道とどう付き合うか!?

北海道移住においては、まず無難なのは札幌への移住であり、地下鉄沿線駅付のマンションに引越しすることがおススメです。

しかし、この記事で取り上げてきたJR線沿線も、地下鉄と複線利用できる新札幌駅や琴似駅、既に発展してきた桑園駅の他に、今回ご紹介した苗穂駅など期待できるところもあります。

但し、整備不良や雪の影響による遅延などは、今後も減少する見込みは低いため、まだまだ地下鉄沿線もしくは市電(路面電車)沿線よりも不利な状況ですね。

今回の結論としては、リタイア組の方などで毎日交通機関を利用して出かける必要のない方には、苗穂や新札幌・桑園・琴似などはおススメできそうですが、その他はちょっと・・・慎重に考えましょう!といったところです。

苗穂駅については「札幌のショッピングモール&食品スーパーは駅直結/駅前が多く選択肢豊富!」に、もう少し詳しくまとめていますので、よろしければどうぞ!

また、札幌市営地下鉄や札幌市電に関しては「札幌地下鉄の料金」「札幌市営地下鉄線の乗り換え方」「札幌地下鉄とバス・市電の乗り継ぎ方法」「札幌市電/路面電車の乗り方と料金」に詳しくまとめています。

以上、JR北海道は遅れすぎ!遅延&運休多いけど札幌での利用状況は?でした。

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